其の三 着物の素材「絹(シルク)」について
絹(シルク)って?
着物にも多くの種類があります。
着物に使われる素材といったら、何を思い浮かべますか?
「絹(シルク)」、木綿、ウール、化学繊維…と、その種類は様々。
今回は、一番代表的な「絹(シルク)」について。
みなさんご存知のとうり、「絹(シルク)」は蚕の幼虫の繭(まゆ)から作った繊維です。
この繭は、中にいる幼虫を外敵や花粉や紫外線から守る殻の存在です。
更に繭の中は適湿適温を保ち、 中の幼虫を優しく守ります。
そんな繭を糸にしたのが、「絹(シルク)」 なんです。
絹(シルク)の良いところ
●手触り・肌触りの良さ
蚕の繭は約20種のアミノ酸を含むタンパク質繊維です。
人の肌の成分に近いことから「第二の肌」と言われるほど!
身体に優しく、軽さ、柔らかさも兼ね備え、滑らかな肌さわりが魅力です
●夏は涼しく、冬は暖かい
シルクの繊維の中には沢山の空気を含む気泡があります。
繊維そのものが熱を伝えにくい上、繊維の隙間に空気が多く含まれています。
肌に触れると温かみを感じ、薄くても保温性に優れているんです。
吸湿性のお陰でさらっと着られ、余分な水分は飛ばしてくれます。
なんと、綿の約1.5倍の吸放質性。
汗をかいてもすぐにサラっと!
●静電気が起きにくい
天然の素材のため、化学繊維と比べて静電気を起こしにくいんです(ホコリを寄せ付けない)。
静電気持ちの体質の方には殊に嬉しい部分ではないでしょうか。
●紫外線を吸収してくれる
繭の時からの得意技・・・
蚕は紫外線を浴びると成長が妨げられてしまうので、蚕の繭は紫外線を紫外線カットしてくれる性質があります!!
強い日差しから肌を守ってくれるメリットがあります。
これは女性には嬉しい。
しかし、これは諸刃の剣でもあります…(後ほど)
●美しい光沢感がある
さまざまな染料に染まりやすい。
その光沢感は真珠と例えられるほど!
美しく染まった「シルク・絹」の綺麗な色合いは気品、上品さがあり他の繊維・素材と一線を画します。
ここまではシルクの良い点だけを書いてきました。
完璧な物なんてこの世に無いっっ!!
続いては、欠点です。
絹(シルク)の欠点
●変色しやすい
紫外線を吸収する力が強いため数回の着用であったとしても、強い日差しに長時間当たっていると黄色く変色してしまうデメリットがあります。
●シミができやすい
無色透明の水であっても濡れると濡れた部分の繊維が膨張、乱れることで毛並みが変わってしまい、光の反射の変化によってシミに見えるようになってしまうことがあります。
水に濡れることで着物に付いていた汚れが溶け出し、シミになってしまうこともあります。
雨で濡れてしまった場合でも排気ガスなどの大気の汚れを含んでいることがあり、シミができてしまうことがあります。
汗によって黄色くシミになることもあります。
●摩擦に弱い
摩擦が加わると繊維束が崩れ毛羽立ちが起きてしまいます。
他にも毛羽立ち、キズ、繊維の切れによって白くなる白化現象が起きることがあります。
白化現象で白くなった場合は元の色に戻すのは難しいです。
着用中にカバンで擦ってしまい生地が毛羽出ってしまった、柄が消えたしまったという人もいます。
●虫食いに遭うことがある
タンパク質を含むため「絹(シルク)」害虫、虫食いの被害に遭いやすいデメリットがあります。
「絹(シルク)」に限らず害虫はカシミヤ、コットン 、リネンなどの天然繊維を好んで食べます。
汗や皮脂、食べこぼしの汚れが付いたままの収納や放置してしまうと、害虫、虫食いの被害を悪化させてしまいます。
一度虫に喰われると修理はできても完全に元には戻せません。
そうならないためにも収納する場合は汚れを落としてから収納スペースを綺麗にし防虫対策をする必要があります。
繊維は自然とある程度の水分を大気中から吸収しています。
繊維の種類によって吸収する水分の量は異なります。
繊維の原料および糸はすべて目方によって取引が行われるため、公正に取引されるようにそれぞれの繊維の公定水分率が決められています。
ポリエステルなどの合成繊維は公定水分率が極めて低く、それに比べて天然繊維は高くなっています。
公定水分率の比較
シルク:11に対して、ポリエステル:0.4
シルク素材の特性がこの数字からもわかりますよね。
着物を大切に保存するために・・・
良いところ、悪いところ、一通り把握して損はないので、保存方法や着物選びの際にお役立てくださいね。
シルクの長短所をわかりやすく説明いただきありがとうございました。
着物の特徴を理解した上で保管することは必要ですね‼️